あなたの記憶はつくられた記憶かもしれない!?

女「ねぇ、私たちが付き合って初めて行ったお店覚えてる?」

男「も、勿論だよ!ぼくが普段行く小汚い居酒屋に連れて行って

  君に怒られたっけ?」

女「え?何も覚えてないじゃない!!

  私と行ったのはお洒落なイタリアンのお店だったわ!

  がんばって予約したんだってあなた照れながら言ってたじゃない!」

男「・・・(そうだったかなぁ?)」

 

 

さて、突然だが上記の会話、正しいのはどちらの主張だろうか?

どちらの主張も具体的なエピソード付きで正しいように感じる。

 

勿論、結局は男性が謝って女性の言い分が通るという当然の帰結は

今はそっと脇に置いておくとして。

 

私たちの記憶とはどこまで信用のおけるものだろうか。

実は私たちが思っている程、記憶なんて当てにはならない。

 

『Five Ways to Meddle with Memory ーSientific Americanより』

『記憶をいじる5つの方法』

 

1. 私たちが記憶を思い起こす度に記憶は変化している。

記憶を思い起こすとき、新しい情報を脳は勝手に古い記憶に

つなぎ合わせてしまう。

 

 

つまり簡単に言えば、前の彼と行ったデートにも関わらず、

新しい大好きな彼との思い出に塗り替えてしまうというわけだ。

 

2. 曖昧な記憶を思い出すことにより、正確な記憶を害することがある。

 

 

つまり、彼女に、

「初めてのデートはお洒落なお店だったでしょ!!」

と強く言われると似たような記憶を呼び覚まし、

それがあだかも正しい記憶であるかのように勘違いする。

こうして彼の記憶は彼女に勝手に浸食されていくのだ。

 

 

3. 誤った記憶を脳に植え付けることができる。

 

既にマウスを使った実験で成功している。

トラウマの治療などには期待が出来るが、誤った記憶を脳に植え付けることの

倫理的問題は無視出来ない。

「楽しい思い出だけなら良いのに・・・。」

なんて願いは所詮叶わない願いだから言えることだ。 

 

4. 両親や祖先から記憶を受け継ぐ可能性がある。

 

これは凄い!

物心つく年には既に得意だったことは親から譲り受けたものかもしれない。

反対に、今私が学んだことが子供に受け継がれる可能性があるなら、

学習にも今よりもっと身が入るのではないだろうか。

 

5. 12オンス(約355cc)のコーヒーに相当するカフェインが

記憶を強化する。

 

 

素晴らしい!コーヒー好きの私にとってはこんなに嬉しい朗報はない!

と思ったら、日頃からコーヒーを飲む習慣がない人に限ったことらしい。

それならば、毎日飲むのは我慢して、試験前だけ飲めば! 

なんてことも考えてはみるが効果は保証出来ない。

 

 

さて、5つの最近の研究結果から記憶をいじる方法をみてきたが、

この記事を読んでもなお、自分の記憶は絶対だ!と言える人はどれ程いるだろうか。

 

私は自身の記憶が、そう、昨日食べた食事ですら信用が置けなくなってきた。

ただ、この脳の記憶がこれ程までに曖昧なのは、

生きていく為に必要不可欠だとも言える。

 

例えば、私たちの祖先がマンモスを狩る時に大怪我を負ってしまったとする。

怪我が治ってからまたマンモスに向かっていく時、

もし記憶が鮮明で、怪我をした時の恐怖や痛みが蘇ってきたらどうだろうか?

きっと二度とマンモスには手を出さず、木の実を食べようと言うに違いない。

 

しかし都合が良いことに私たちの脳は曖昧にしか記憶しない。

痛かった記憶は美味しい肉を食すことで和らぎ、

またマンモスに向かうことが出来るのだ。

 

「覚えられない!!」と嘆くより、こんなお茶目な脳に感謝して、

日々を楽しみたいと私は思う。

 

ちなみに、英語の記事を読むのが億劫な方は下記の動画もおすすめ。

 

『The fiction of memory ーElizabeth loftus』

『記憶が語るフィクション』/TED動画より

 

 

 

4月13日/10日目達成。